その日暮らし

精神的その日暮らし

十三の物語

スティーヴン・ミルハウザーの最新作。
邦訳が、最新作ということですが。
13の作品が収められた短編集で、
全体が4つのセクションに分かれ、それぞれ、
「オープニング漫画」「消滅芸」「ありえない建築」「異端の歴史」と、
ファンにはおなじみ、
ミルハウザーの十八番テーマがずらりと並んでます。



冒頭の「猫と鼠」は、『トムとジェリー』を深く思索的に掘り下げた不思議な作品。
あのドタバタアニメとは思えない雰囲気だけど、
実際のところ、トムもジェリーも、
深層心理でこう考えていてもおかしくないかも?なんて思ってしまう。



個人的には「ありえない建築」の作品たちが好きだな。
中でも、小さい方へより小さい方へと進む「ハラド四世の治世に」よりも、
大きい方へより大きい方へと進む「塔」や、
ありえそうで、よく考えたら絶対ありえない「ザ・ドーム」「もうひとつの町」が好き。
女性のファッションの変遷を描いた「流行の変化」や、
ミステリーちっくな「イレーン・コールマンの失踪」も面白かった。



ミルハウザー読み始めたばかりの頃、
どう考えてもありそうにない建築や発明品が、
あまりにリアルに、歴史に基づいたかのように描かれているため、
アメリカにはこんなものが昔存在したのか、すごいなあ、
と半ば信じていたものですが、
今になって分かる。
ミルハウザーの芸に、まんまと引っかかっていたのであると。






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星の民のクリスマス

星の民のクリスマス

星の民のクリスマス

ある歴史小説家が、4歳の娘のために、他愛ないお話を書いてプレゼントした。
父親の方はその物語をほとんど忘れていたが、
娘が10歳になる頃には、その物語は娘の一部となっていた。
そしてある夜、娘は失踪した。
父親の書いた物語の中へと・・・。



なんとなく気になって手に取ったら、
2013年日本ファンタジーノベル大賞受賞作だったので、
即決で読むことに決定。
以前、同賞の大賞と優秀賞作品を読み漁った時期があるので懐かしい。
ファンタジーノベルといっても、フワフワした剣と魔法の世界でなく、
殺伐、時に陰惨なのがこの賞の特徴。
森見登美彦太陽の塔」のようにスパーンと明るいものもあるけど)
この小説も、導入部こそ4歳の娘に書かれたほんわか童話なのに、
すぐに殺伐としてきて、どす黒い人間心理が出てくる。
いやいやでも面白かった。
この作りこんだ世界観はすばらしい。
さすが大賞を取っただけのことはある。






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ねじの回転

ねじの回転 (新潮文庫)

ねじの回転 (新潮文庫)

イギリスの田舎の古い屋敷を舞台に書かれた19世紀後半の小説。
田舎から出てきたばかりの若い娘である“私”は、
古い屋敷で幼い兄妹の家庭教師をすることになった。
奇妙な条件が提示されたものの、子どもは可愛らしく、
“私”は張り切っていた。
しかしある日突然、幽霊が現れ、事態は悪い方向になだれ落ちていく・・・。



以前から読みたいと思っていて、
いざ読もうと紹介文を見たら、ホラー小説と書いてあるじゃないか。
少したじろいだが、昔の小説だから、さほど怖くないだろう・・・
と思って読んでみたら怖かった・・・。
設定から、ね。
古い屋敷、美しすぎる子どもたち、怪しい雇用条件、死の匂い・・・
いかにも怖そう。
(ちなみに表紙も怖いよね!)
でもホラーというよりはサスペンスではなかろうか。
幽霊の描写は、端的なわりに読者に恐ろしさが伝わるもので、
そのあたりはホラー的に怖いのだけど、
本当に怖いのは生身の人間かもしれないね・・・
(幽霊だって昔は生身の人間だったし)
というようなお話です。
面白かった。
何がどうなってるのか分かりにくくてもどかしいけど、
そこがこの小説の持ち味でもあるらしい。






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巡礼者たち

巡礼者たち (新潮文庫)

巡礼者たち (新潮文庫)

カウボーイ、酒場の女主人、青果市場で働く男、さびれた村の人々、
様々な立場の人たちの、人生のひとこまを描いた短編集。
ただ淡々と人生の悲哀を描く、というものでなく、
ストーリーにめりはりがあり、人々に力強さがあるので読みやすいし、
きれいにまとめてある上手い短編だと思った。
デニー・ブラウン(十五歳)の知らなかったこと」
「花の名前と女の子の名前」
などのストーリー運びや、
「華麗なる奇術師」の展開、
「最高の妻」の構想など実に巧み。
どうしたらこういう作品が書けるのだろう。






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憂鬱な10か月

[rakuten:hmvjapan:16536107:detail]
「まだ若いとさえ言えず、生まれたばかりだとさえ言えないこのわたし」(本文より)
つまり胎児であるわたしは、
人々の会話や、母親の聞くラジオを通して、
世界の多くの状況を知り、
複雑な政治情勢やワインや詩などについて考察している。
そしてわたしは知ってしまったのだ。
母親には愛人がおり、
二人でわたしの父親を殺そうとしているということを・・・。



ぶっ飛んだ設定がまず面白い。
胎児のくせに冷静で毒舌な語り口の勢いと、
両親の運命、
さらにこんな修羅場の渦中にもうすぐ産み出される主人公の運命、
が気になって、一気に読んでしまいました。
言われてみれば私も、ふっと思ったことがあるよ。
妊娠中の妹と話しながら、
あっ、この会話、お腹の子に聞かれてるかもしれないなあ、
二人目ができたら一人目の子が嫉妬して二人目をいじめるかもね〜
みたいな話を、この胎児はじいっと聞いてるかもしれないんだなあ、と。
うかつなことは言わない方がいいかな、と。
この作者も、妊娠中の義理の娘さんと話をしていた時に、
この小説のネタを思いついたそうです。
ネタを逃さずすくい上げる嗅覚って大事。






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