その日暮らし

精神的その日暮らし

桃山さん・その4

風邪をひいたため、アパートにこもりっきりで、
退屈で寂しいので、パソコンに向かう私。
そんなわけで、続きを書きます。



桃山さんの話・その4。



努力の甲斐あってか、桃山さん宛ての電話は少なくなっていった。
結婚して一年経った頃の冬には、営業電話はほとんどかからなくなり、
たまに知り合いと思われる人から、かかる程度になった。
マシンガントーク作戦にだんだん疲れてきていた私は、
いつしか丁寧な応対へと戻っていった。



こうまで桃山さん宛ての電話がかかると、
自然桃山さんのプロフィールが分かるようになってきた。
相手が年配、それも老人であることが多く、
そういう人は、勝手に色んなことを喋ってくれるからだ。



例)
「もしもしい、桃山さんのお宅ですかいな」
「いえ、違います。桃山さんは、以前この番号を使われてた方です」
「え?××町の○丁目に住んどっての桃山さんじゃあないんですか」
「違いますー」(相手に合わせて大声でゆっくりと)



そうか。桃山さんは、××町の○丁目に住んでいた(住んでいる?)んだ・・・。
ちなみに××町は、我が家から車で10分ほどの距離にある町。
桃山さんが、老人であることも分かってきた。
××町老人会からかかってきたからだ。
そしておそらく、老夫婦かおばあさん一人。
おばさん・おばあさんからかかってくることが多く、
更に彼女らは、こっちが何か言う前から用件を話し始めることが多かったから。



例)
「はい、もしもし」
「ああ山田ですけどねえ。こないだの件なんじゃけど(以下、口を挟めないマシンガントークで話しまくる)」
「ちょ、ちょっと、待って下さい!ウチは桃山さんじゃないですよ!」



あの世代は、男と女の線引きが厳しいので、
おじいさん相手の電話で、ぺちゃくちゃ勝手に話し始める非礼はしないかと。
だから桃山さんは、老夫婦かおばあさん一人か、
少なくともおじいさん単身世帯ではなかったのではないかと。
以前、家を簡単にリフォームしたらしいということも分かった。
個人情報がだだもれである。



知り合いと思われる人は、まあまあ感じ良い人が多かったが、
中には心底腹の立つヤツもいた。



例)
「はい、もしもし」
「桃山さんのお宅ですか」(陰鬱なババアの声)
「いえ、違います」
「・・・あんた、誰?」(疑いと警戒に満ちた言い方で)



な、何その、私がまるで桃山さん宅を乗っ取った悪者と言わんばかりの言い方は!
自分が番号押し間違えた可能性だってあるのに。
見知らぬ人間に、失礼極まりない言い方で、「あんた誰」はないだろ!
さすがにこの時はブチ切れて、猛烈に文句を言った。
似たようなケースでは、こちらの名前をしつこく聞いてくる人もいた。
多分、桃山さんの親戚だと思ったのだろう。
もちろん名乗る必要はないので、無関係だと何度も主張して、
強引にあきらめさせた。



ずっと対応していると、相手が必要とする情報が何なのか分かってくる。
分かってきてからは、いちいちやりとりするのが面倒なので、
「いえ、違います」の後、息継ぎせずに続けて、
「桃山さんは以前この番号を使われてた方ですが、今は私が使ってます。
桃山さんのことは全く知りません。無関係です」
と一気に説明してしまうことにしている。
これでもすぐには理解してもらえないし、
しばしば、私が桃山さんを追い出したように受け取られる。
老人に “全く知らない” “無関係” という言葉は、強すぎるせいかもしれない。
でももうそんなこと気にしてられるかっての・・・。



→続く!






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