実家に泊まった夜のこと。
そろそろ寝ようかという時間に台所へ行くと、
祖母が冷蔵庫を開けて中をゴソゴソしてました。
「ばあちゃん、何してんの」
祖母は長時間、冷蔵庫を開けっぱなしでゴソゴソすることがあり、
それって冷蔵庫の中が温かくなってしまうので良いことではありません。
勝手も分からずゴソゴソして、食べたらいけないもの食べたり、
ダメにしちゃったりしても困るし。
「ばあちゃん、私が出したげるから、何探してるの」
尋ねると、
「喉が渇いたのよ」
と答えます。
私 「部屋にお茶があるでしょ」
祖母「お茶じゃなくてね・・・」
私 「何が飲みたいの」
祖母「あのね・・・（ゴソゴソ）」
私 「コーヒーだったら冷蔵庫じゃないよ」
祖母「だから・・・（ゴソゴソ）」
私 「あまり冷蔵庫開けっ放しにせんで」
（と言いながら祖母をポットの方へ連れて行こうとする）
祖母「温かいものが飲みたいのよ（ゴソゴソ）」
私 「温かいものは冷蔵庫にないよ。なおさらお茶かコーヒーがええじゃろ」
再び祖母をポットの方へ連れて行こうとすると・・・
祖母「もう！！飲んだっていいでしょ！！（怒）」
いきなり祖母に怒鳴られました。
祖母は穏やかな性格で、家の外でも中でも、怒ったところを見たことがありません。
（祖父が認知症になりイライラしていた時期は除きますが・・・）
そんな祖母に怒鳴られたので、孫びっくり。
ボーゼンとしていると、近くでやりとりを聞いていた母が、
黙って冷蔵庫から缶ビールを出し、祖母に渡しました。
嬉しそうにゴクゴクとビールを飲んだ祖母。
「ああおいしかった」
いつもの穏やかな顔に戻ってました。
なるほど・・・ビールを飲みたかったのか・・・。
ていうか母よ、祖母がビールを飲みたがってると知ってたのなら、
もっと早く出してあげてくれ。
無駄に祖母を怒らせてしまったじゃないか。
祖母も、ビールを飲みたいなら飲みたいと言ってくれれば私も分かったのに。
やはり大正生まれの女性は、酒を飲むことをはしたないと思い、
自分からは言い出せないのでしょうか。
最近時々「おじいちゃんはお酒を飲まなかったから・・・」と話すのは、
きっと不満だったからなのだろう。
夫が飲まない酒を、妻が飲むわけにはいかないと大正生まれは思っていたのかもしれない。
祖母はお酒に強いわけではありません。
少量飲んでゆっくりするのが好きだったのでしょう。
それにしても、お菓子を食べるのを止めたりしても、
不満を言うことはあれど怒ることはないのに、
ビールは怒るのか。
酒というものは人間を惑わす力を持っているのか。
飲酒にうしろめたい気持ちがあるので、カチンと来てしまうのか。
それとも単に、孫がうるさすぎたのか・・・。
ちなみに祖母は、缶ビールを何日かに分けて飲みます。
飲みかけは口にラップして冷蔵庫で保存。
いやー・・・それって美味しいの？
開けてすぐ飲まないと、なんか抜けちゃうんでしょ？
下戸の私には分からんが、相方にこの話をすると、
「うわー、そんなまずいビール飲みたくねえ」
って言ってました。
その日祖母が飲んでたのは、ラップして保存してた抜け抜けビール。
しかもよく見たら「ノンアルコール」。
祖母の体を考えて、母はこっそりノンアルを用意しているようです。
もちろん祖母はノンアルなんて気づいてません。
抜け抜けの酔えないビールを、美味しそうに飲んでました。
まあ、本人が幸せならそれでいいのか・・・。
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