その日暮らし

精神的その日暮らし

桃山さん・その1

いつか書こうと思っていた、桃山さんの話。その1。
桃山さんというのは仮名です。
ありふれた名前じゃないけど、特別珍しいわけでもない、
そんなところが似ているので、桃山さんという仮名を使う。



桃山さんとの出会いは、結婚してすぐの頃だった。
アパートに越してきてから、固定電話を引いた私たち。
結婚しましたハガキを出すまでは、
まだ実家くらいにしか電話番号を教えていなかった。
実家も、用がある時は携帯にかけてくるので、
固定電話はほとんど使われていなかった。



ところがある日、固定電話が鳴り響いたのである。
え!?誰!?と、驚くというより、不気味に思う私たち。
「はい、もしもし」
『桃山さんのお宅でしょうか?』
「いえ、違います」
『そうですか、失礼しました』



よくある間違い電話だと思った。その時は。
しかしそれ以来、桃山さん宛ての間違い電話が、
しばしばかかってくるようになったのである。
いくら何でもこれはおかしいと、
ある日私は、電話の相手に、どの番号にかけているのか聞いてみた。
相手の告げた番号は・・・我が家の番号だった。
つまり、以前、桃山さんという人がこの番号を使っていて、
桃山さんが固定電話を廃止した後、私たちにその番号がまわされたのである。



→続く!