その日暮らし

精神的その日暮らし

となりのトトヨ

こないだ、妹が子どもたちを連れて実家に帰省した時。
甥っ子(2歳)に、私の家に遊びに来てもらいたいので、
「うちに来たら、トトロの森に連れていってあげるよ」
と言いました。
甥っ子は今、トトロがマイブームなのです。
もちろん、トトロのいる森はありません。
“トトロがいそうな”、神社を包む鎮守の森に連れていってあげようと思ったのです。
甥っ子は大都会に住んでるので、田舎の風景は見慣れてない。
トトロがいそうな自然を、テレビの中だけでなく、実際に体験してほしかったのです。



さて、甥っ子たちが来る日。
車が着きました。
「いらっしゃ〜い」
ウキウキ出迎えると、甥っ子、車を降りるやいなや、



「トトヨ(トトロ)どこ?トトヨ見ゆ(見る)!トトヨどこ?トトヨ見ゆ!」



必死の形相で周囲をきょろきょろ見回し、パタパタ走りまわり始めました。



「トトヨどこ?トトヨ見ゆ!トトヨどこ?トトヨ見ゆ!」



私の背筋を、さーっと冷たいものが走りました。
やばい・・・煽りすぎた。
どうしよう、私、子どもの夢を踏みにじる大人になっちゃうの!?



慌てて妹のそばに寄り、ささやきます。
「ど、どうしよう、どうしよう、あんなに楽しみにしちゃって・・・もしトトロがいなかったら」
いやいや、もし、じゃなくて・・・いませんから。
甥っ子の熱意に呑まれて、いないって断言できなくなってる大人。
「あたしもね、昨日の夜トトロトトロってだいぶ煽ったんだよね。ちょっと煽りすぎた」
と妹。
「そ、そうか・・・」
少しは罪の意識が薄らぎましたが、甥っ子は相変わらず、
「トトヨどこ?トトヨ見ゆ!」
を繰り返しながら走りまわってます。
「じゃあ、トトロ行こうか?」
さすが妹は堂々としていて、甥っ子を連れて家の外へ。
「トトヨ!トトヨ!」
うきうき叫ぶ甥っ子の後ろで、
「どうしようどうしよう」
おろおろする私。
鎮守の森は遠くなく、すぐに着きました。
うっそうと木が茂っているので、甥っ子は怖がるかと思ったけど、
そんな様子もなく、狭くて急な石段をヨイショヨイショと上ります。
なんとかトトロから関心を引き離さねば。
「あっ、ドングリ落ちてるよ!」
「ドングイ」
甥っ子は戻ってきてドングリを拾いました。
トトロ忘れて、ドングリに夢中になってくれないかな・・・?
「トトヨ」
だめでした。
ようやく神社の境内まで上ってきた私たち。
私たち以外誰もおらず、高い木々に囲まれた空間はしんとしています。
「トトヨどこ?トトヨ見ゆ!」
甥っ子は走りまわります。
私は妹のそばに寄り、ささやきます。
「どうしよう・・・もしトトロがいなかったら」
だから、もし、じゃなくて・・・いませんから。
「だいじょーぶ。あたしが上手く言うから」
さすが妹の堂々とした返事。
「トトヨ!トトヨ!」
と叫び続ける甥っ子に、妹、
「あのねー、トトロはいつも見れるわけじゃないからねー。時々しか会えないからねー」
おおっ・・・そう来たか・・・
感心する大人の私。
でも2歳児は簡単には納得しません。
「トトヨ!トトヨ!」
神社の裏手を探します。
薄暗いのに、怖くないのかな?
「あのねー、トトロはいつも見れるわけじゃないからねー。時々しか会えないからねー」
妹、再度の説得。
それでもしばらく、甥っ子はトトロを探してましたが、
ある瞬間からぷつりと、トトロトトロ言わなくなりました。
あきらめたんでしょうか。
「ごめんね・・・悪い大人で」
心の中で謝る私。
「残念だったねー。今日はトトロいなかったねー」
さすが妹、上手い具合に誘導していきます。
・・・こうして都会っ子の、トトロの森初探検は、残念な結果に終わりました。
彼が手にしたのは、ドングリひとつ。
でも懲りずにまた、彼の町にはない、
トトロがいそうな自然を体験しに来てほしいですね。






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