その日暮らし

精神的その日暮らし

桃山さん・ラスト

桃山さんの話・その5



冬の間、桃山さん宛て電話はほとんどなくなり、
もう桃山さんからは解放されたと思っていた。
ところが、今年の春になると、再び増え始めたのである。
去年の春ほどではないにせよ、結構な数だった。毎日かかってきた。
まるでそれまで冬眠していた動物が、一気に活動を始めたかのようだった。
春は、人々や団体が、改めて動き出す季節なのだろうか。
そんなことを、間違い電話で実感するとは思わなかった。



もう営業はほとんどなく、大部分が知り合い関係のようだった。
マシンガントーク作戦には疲れていたので、しつこい電話にも、丁寧に対応する私。
帰宅して留守電が光っていて、
聞いたら桃山さん宛て・もしくはメッセージを入れていないと、がっくりする。
メッセージを入れてないのは、桃山さん宛てでないランダム営業の可能性もあるが、
桃山さん宛て知り合い電話の可能性も十分ある。
おばあさんは留守電が苦手だから、そのまま切ってしまうのだろう。
私が直接話せれば、違いますって言えるのに、
留守電じゃあ・・・またかかってくるじゃないか。



そういえば、留守電のメッセージに「この番号は桃山さんではありません」と、
オリジナルメッセージを吹きこむ案も考えたが、
(そして昼も夜も常時留守電にしておく)
我が家宛にかけてきた人にヘンに思われたくないので、止めた。
(ま、固定電話にかけてくるのは、
ほとんど営業か図書館←予約していた本が入りました通知。だけど)



ところで桃山さんはなぜいなくなったのだろう?
普通に考えれば、引越ししたのだけど、年寄りがそうそう引っ越すだろうか?
息子か娘のところへ移って、同居するようになったのだろうか?
それならなぜ、あれほど多くの知り合いが、
桃山さんの番号が変わったことを、知らなかったのだろう。
・・・まさか、まさか、引越し先は、息子のところじゃなくて、



天国・・・?





今でもたまに、桃山さん宛て電話はかかってくる。
春よりだいぶ減ったが、また来年の春になったら、増えるような気がする・・・。
こういうケースは、ウチ以外にもあると思うのだが、
N☆Tは何も対策を考えていないのだろうか。
確かに、対策取りづらいとは思うけどさ・・・。
ウチ以上に困る家庭はあると思うので、何か考えてほしいですね。



桃山さんの話はこれで終わり。
また進展があったら書きます。
ない方が良いけど。