その日暮らし

精神的その日暮らし

【読書】喜べ、幸いなる魂よ

 

佐藤亜紀さんの新作。

 

18世紀ベルギー。少年ヤンは、ある商家に引き取られた。
そこの娘ヤネケはヤンを誘い、ヤンの子を産むが、まわりが止めるのを振り切ってベギン会に入ってしまう。
ヤネケは自分の思うままの人生を生き、
ヤンはヤネケを想い続けながらも、
目まぐるしく変わる事情に振り回され、自分の人生を切り開いていく・・・。

 

ベギン会というものがあったそうで。
尼ではなく半聖半俗という形で、独身女性たちが集まり、
自分で稼いで生きていくというもの。
昔の女性は、現代よりも生き方が狭められ過酷であった。
そんな中に、このようなすばらしい場所があったとは。

 

ヤネケは天才だが、女であるがゆえ、自分の名前では学問も商売もできない。
そこで(?)ベギン会に入り、利用できるものはすべて利用して(自分の弟も、自分に惚れてるヤンも)、
やりたいことをやる人生を歩む。
それでいて実家の商売の手助けも陰でする。実家は大いに繁栄する。
痛快と言っていい。

 

しかし終盤、政治情勢の変化で状況がおかしくなってくる。
ある人物が、醜悪な女性嫌悪・蔑視・敵視の主張をする。
それまで語られた物語によって、この主張は鼻で笑われる程度のものであると示される。
しかし、力(権力・暴力)はある。
低レベルな内容だが、残念ながら力を持っている。
そしてさらに残念なことだが、18世紀ベルギーのみならず現代日本でも、
この主張は、多少マイルドになったとはいえ、きっちり受け継がれているのが分かる。

 

ベギン会が光であるなら、この気分が悪くなる醜悪な主張は底なしの影。
なぜ作者は終盤で、このような主張を、この人物にさせたのか?
疑問が生じる。
そして思う。光のベギン会が、この影を生んだということか。
ベギン会と、この胸糞悪い主張は表裏一体ということか。
非道なこの主張も、ベギン会の強さも、いつまでも生き残るということか?

 

うーん。難しい。

 

とりあえず、ヤネケとヤンにときめく。
アンナ・ブラルも好き。
んでマティリス博士もわりと好き(笑)
マティリス博士やニコラウスみたいな、うさんくさい脇キャラを配してくるところが、
佐藤亜紀さんの作品の魅力のひとつ。

 

 

 

 

 

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